南予森林組合・南予森林管理センター　地鎮祭（令和２年９月23日更新）

ページID：0006967 印刷用ページを表示する更新日：2020年9月23日更新

　「森の国」と呼ばれている松野町は、その名のとおり、国立公園滑床渓谷に代表される豊かな森林資源に恵まれていて、町の総面積の84％にあたる8,230haが森林となっています。その内訳を見てみると、民有林が5,494ha（67％）、国有林が1,717ha（21％）、町有林が931ha（11％）で、民有林のほとんどがスギやヒノキの人工林です。現在建設中の役場新庁舎では、木造の２階部分に町有林のスギを使用するほか、ロビーには滑床渓谷の国有林から切り出した樹齢100年のヒノキの柱がそびえるなど、「森の国」を象徴する建物になるように工夫をしています。

　さて、松野町の面積のかなりの部分を占める民有林ですが、全国の過疎の市町村と同様に、担い手不足で間伐などの手入れが十分でなく、荒廃が年々進んでいます。

　その理由として、戦後の復興の中で拡大する木材需要に対応するため、国が主導して大規模なスギやヒノキの植林が行われましたが、木材の生産には何十年という年月が必要で、利用できる成木になるまで待つ余裕がなかったため、海外から木材の輸入が解禁されました。その結果、安価な輸入材が市場の主流を占めて国産材では価格的に太刀打ちできず、国内の林業は衰退、国内の森林は荒廃していくという何とも皮肉な結果となってしまったのです。

　間伐が行われない放置林は、密植のため太陽光が地面まで届かず、草や低木が育たないことから、土壌がむき出しとなって保水力が低下し、洪水や地滑りなどの災害が起こりやすくなります。また、野生生物の餌も不足するため、行き場を失ったシカやイノシシが人家近くや田畑に現れるようになり、人間との間でトラブルが多発しています。この他にも、森林の持つ多面的な機能が失われることによって、私たちの身の回りで様々な問題が発生し、大きなリスクを抱えるようになったのです。

　この危機的状況を打破しようと、国は平成30年に「森林管理経営法」という法律を作り、「森林環境税」を導入して、森林の活用と環境の保護に乗り出しました。

　この制度は、経営管理が現状できちんと行われていない森林について、市町村が森林所有者の同意のもと伐採等の経営権を引き受け、採算が合う森林は林業事業者に再委託し、採算が合わない森林は市町村が直接管理するというものです。市町村が直接経営管理を行うことで、地球温暖化の防止など森林の多面的機能を高め、林業の活性化と森林の適切な管理の両立を目指すもので、必要な経費は国民から集めた森林環境税で手当てするとの内容です。市町村の役割と責任が一気に大きくなったわけで、これは時代の要請だから受けて立たなければならないと覚悟を決めたものの、小さな松野町だけでは少々手に余ると思っていました。

　そんな折に、県の林業部局からの提案で、森林の保全と林業の振興は宇和島圏域の共通の課題であり、新たな制度に沿って効率よく成果を上げるには、宇和島市、鬼北町、松野町の３市町と、圏域の林業の中核的事業者である南予森林組合が、共同で組織を作って取り組んではどうか、その拠点となる事務所「南予森林管理推進センター」は、老朽化のため移転、新築する南予森林組合の新事務所に併設してはどうか、という話が持ち上がりました。

　まさに「渡りに船」、同じ思いを持つ３市町と南予森林組合で準備を進め、昨年12月に南予森林管理推進センターを設立して暫定的に業務を開始していましたが、このほど森林組合と南予森林管理センターの共同事務所が鬼北町に新設されることとなり、その地鎮祭が９月16日に関係者出席のもと執り行われました。宇和島圏域の森林林業施策の転機となり、新たな一歩を踏み出したものと大きな期待をしているところです。

　この新しい建物、木造ながら鉄筋コンクリート並みの強度を持つＣＬＴ（直交集成板）工法で建設され、木材の新たな需要を掘り起こすシンボル施設としての役割も果たしてくれるでしょう。

地鎮祭であいさつする南予森林組合・兵頭組合長