荒星(あらぼし)とは、木枯らしの吹くような冷たい夜に輝く星を指し、冬の季語として使われることが多いのですが掲句の場面は夏、季語は風鈴です。暑さが本格的になるこの時期、民家の軒下に吊るされた風鈴は、冷房の無い時代から私たちに涼を感じさせてくれるアイテムです。
不器男は大正15年7月に学友、得能通任と共に日光中禅寺湖、戦場ヶ原、怒鬼川温泉、藤原温泉などを周遊し松野町に帰省しています。この句もその周遊中に作られた1句と思われます。
日中の暑さが消え肌寒ささえ感じられる旅先の夜、風に鳴る風鈴の澄んだ音色に誘われて夜空を眺めると、空いっぱいに広がった星々が荒々しく輝いていた、そんな情景が思い浮かびます。
鑑賞・解説