不器(ウツワナラズ)
今月の不器男句
森の国俳句教室

平成22年度

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年5月10日更新

俳句ポスト3月入選句(芝不器男記念館長選)

秀作

 母と子の絆のあかし春の虹

 

 少年の真白き未来辛夷咲く

佳作

 初雪や窓にまねかれみな笑顔

 

 吊橋を揺らせて渡る春の川

 

 囀の中へつり橋ゆらし行く

 

 菜の花や誘われ着きし不器男館

 

 花鳥のつがひたわむる庭の朝

 

 

松野町

 

鬼北町

松山市

 

四国中央市

 

尼崎市

 

松山市

 

鬼北町

 

 

駒山 忠夫

 

宮崎 きくを

渡辺 ひかり

 

佐藤 正子

 

上和田 玲子

 

政石 英作

 

中尾 正

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


館長の視点

 「初雪や窓にまねかれみな笑顔」
 中学生らしい新鮮な句である。窓辺に寄り集まるにぎわいの伝わってくる、動きを感じる1句である。中七の「窓にまねかれ」で雪やコンコン、あられやコンコンの唄が出そうな動的な句とも感じられる。初雪に出逢った時の『感動句』と言えるのではないだろうか。

俳句ポスト2月入選句(芝不器男記念館長選)

佳作 

 若夫婦ガラス工房に雛えらび

 霜白し万目蕭条旭日射す

 遠嶺に去年の雪のせ県境

 すれ違ふ人に湯の香や春の雪

 うぐひすの音のせせらぎに加はりぬ

 山の子の跳ぶ身軽さや梅日和

 名刹の庭に豆炒る鬼やらひ

 不器男忌や散る白梅の奥座敷

 つくばゐに水のあふれて不器男の忌

 庭椿の蕾の固さ不器男の忌

 風の出て梅の散り出す不器男の忌

 白梅の匂ふばかりに不器男の忌

 梅の香や不器男舘のガラス窓

 春障子不器男の翳に蹤きにけり

 母の背を押して登りぬ梅日和

 野を焼くや夕空覆ふ煙かな

 橋を来る親猿子猿春の雨

 不器男忌の静かに速き山の雨

佳作

鬼北町

四万十市

八幡浜市

鬼北町

西条市

八幡浜市

鬼北町

大洲市

大洲市

大洲市

大洲市

大洲市

大洲市

西条市

鬼北町

鬼北町

松山市

松山市

佳作

大川 眺春

竹崎 蛍子

前田 一夘

中尾  正

和田  糺

二宮 節子

宮崎 きくを

岡田 二枝

板倉  肱泉

板倉  肱泉

入山 マサ子

宮部  敏博

川田  勝子

和田  糺

中尾  正

松田  ツル子

武智  和美

岡本  典子

館長の視点

  「つくばゐに水のあふれて不器男の忌」この句の作者の庭に「つくばゐ」があるのだろう。春の滴る水がつくばいからあふれて流れているのだろうか。つくばいそのものに着目する作者の眼光に鋭さがあり、「不器男忌」とのとりあわせの妙を感じさせる一句となった。

俳句ポスト1月入選句(芝不器男記念館長選)

 

秀作

 雪道やコミュニティバス今日も行く

 

 山風をいつも身近に大根干す

 

佳作

 杵で搗くそばから熱き餅を食ぶ

 

 冬菫咲くや子の摘む土手の道

 

 

松野町

 

鬼北町

 

 

鬼北町

 

鬼北町

 

 

田中 志津代

 

中尾    正

 

 

宮崎  きくを

 

松田 ツル子

 

館長の視点

  俳句を詠む姿勢としては、日常のありふれたくらしの中でふっと感じた感動(おどろき)を切り取って、素直なことばで表現すればよい。田中志津代さんの句のように雪道の田舎の風景のひとこまを切り取って表現するのも俳句の一つの手順である。くらしの中で感じたことを五・七・五に閉じ込めるとよい。

俳句ポスト12月入選句(芝不器男記念館長選)

佳作

 不器男家の廊下の艶や冬うらゝ

 深々と冬陽の中や不器男館

 寒禽(かんきん)の声の重なる屋根の上

 葦原(あしはら)に群れし雀の騒がしき

 一筋の光となれり冬の川

 軽き嬰(やや)柚子湯に入れてなほ軽し

 

東温市

東温市

鬼北町

鬼北町

鬼北町

鬼北町

 

木下 典子

菅野 美代

松田 ツル子

松田 ツル子

中尾   正

宮崎 きくを

館長の視点

 今月は不器男記念館に直接来館された方の実感のこもった句が入選した。直観的ではあるがその時の実感は大切な感情であろう。そらぞらしく頭で詠みあげた句ではなく不器男の生家で不器男を偲んでの句には選者として深い共鳴を覚える。

俳句ポスト11月入選句(芝不器男記念館長選)

佳作

 冬うらら眼下に旧名明治村

 銀杏散る空の一角掻き落し

 吊橋の揺れ身に残り秋の風

 落葉踏む音追ひ越して遠ざかる

 牛見えぬ牧広々と冬ざるる

 山紅葉きこゆるものは渓の音

 はるけくも不器男生地や谿紅葉

 不器男生家つわ蕗の黄の明るき日

 宿障子開けたしかむる今日の晴

 道曲り山の日翳り冬紅葉

 渓流の音昂ぶりて紅葉冷

 柿たわわしあわせ色を深めけり

 朝顔と猫一匹と住まひけり

 故郷の母はひとりなり柚子届く

 遊鶴羽の里の刈田へ霧動く

 いちょうのはじゅうたんみたいにおちている

佳作

松山市

高松市

高松市

高松市

高松市

高知市

調布市

調布市

高杉市

高松市

高松市

鬼北町

鬼北町

鬼北町

鬼北町

宇和島市

佳作

村上 依里

柏   敏子      

金沢 正恵

金沢 正恵

久保 佐知

岡村 一夫

大竹 安子

大竹 安子

三宅 博子

大山 孝子

内田 房恵

宮崎 きくを

宮崎 きくを

中尾  正

中尾  正

毛利 帆乃加

館長の視点

 「冬うらら眼下に旧名明治村」の句。高台から松丸を見下ろしての作であろうか。かつての明治村(あけはるむら)の地名をなつかしく想い出して、突然口ずさむかにつぶやいたのか、自分の故郷に思いをはせてごく自然に出てきた一句であろう。下五音を「・・・明治村」と詠んで地名と共に人情をもほうふつとさせる一句である。また、俳句という独特の短詩型の裏面にさまざまな想いを秘めた一句である。

俳句ポスト10月入選句(芝不器男記念館長選)

秀作 

 山の影山に落として今朝の秋

佳作

 さわやかやペンギン散歩を囲む人

 牧の牛ひと日はじまる露の中

 名月や句会を終へし帰り道

 ひとり聞く夜半の雨や紅葉宿

 夭折の不器男偲べる岩ききょう

秀作

鬼北町

□作

鬼北町

八幡浜市

鬼北町

鬼北町

東温市

秀作

宮崎 きくを

大川 眺春

井上 テイコ

松田 ツル子

中尾  正

道満 光子

 

 館長の視点

 今月は松田ツル子さんの句を取り上げたい。つぶやくようにさらりと詠みきった作句姿勢に共感を覚える。俳句会を終えての帰り道、名月の光でいつもの帰り道がいっそう明るさを増して感じたのである。「明るい」とは言っていないが、月の照らす道に心の中まで明るくなってきたのであろう。 

俳句ポスト9月入選句(芝不器男記念館長選)

 

佳作 

 捨畑のきちきち飛んで日暮けり

 蟻群れて虫一匹を運びきる

 草そよと揺れて人の死蚯蚓の死

 秋立つや町を見下ろす小学校

 朝顔の七十までは数へけり

 手を合はす投句の人や秋桜

 稲架かげに消えてしまひし鬼ごっこ

 旅一日不器男の里の水澄んで

佳作 

八幡浜市

鬼北町

宇和島市

鬼北町

鬼北町

鬼北町

八幡浜市

松山市

佳作 

前田 一夘

宮崎 きくを

脇谷 梨花

中尾  正

松田 ツル子

松田 ツル子

二宮  節女

佐々木 真理

  館長の視点

 前田氏の「捨畑のきちきち飛んで日暮けり」の一句は、草深い田舎の様が如実に語られている傑作のひとつである。十七音の短詩型の中に、秘められる思想の奥深さこそ俳句の醍醐味である。自然のありふれた動きを鋭い心眼でキャッチして、きちきちのキチキチの擬音も連想させる表現には驚き入った。

俳句ポスト8月入選句(芝不器男記念館長選)

秀作

 倒れてもほのと百合の香放ちけり

 山峡やただ蜩(ひぐらし)の鳴くばかり

 

佳作

 秋風や不器男の土間をしばし借り

 新涼やはるかを眺む遺影の目

 裏戸より風とり入れて残暑かな

 木もれ陽と風とたわむる親子猿

 森の国凛とたたずむ鹿親子

 竜馬より不器男へと秋深まりぬ

 表より裏を見通す夏舘

 廃校の深閑として蝉しぐれ

 蝉しぐれ扉閉ざさぬ禅の寺

 

 

鬼北町

新居浜市

 

 

加須市

加須市

桶川市

さぬき市

渋谷区

加須市

久喜市

鬼北町

鬼北町

 

 

松田 ツル子

一色  良子

 

 

落合 美佐子

島崎 なぎさ

前畑  厚子

砂川  玲子

久松  雄治

落合  水尾

矢部  忠一

中尾   正

宮崎 きくを

 

館長の視点   

 今月の秀句「倒れてもほのと百合の香放ちけり」 五感のひとつ臭覚で感じとっての句でしょうか。鋭い感覚です。日常のくらしの中で、何気なくふとかぎとった百合の香なのです。倒れてなお香を放つ百合の愛ほしさへの感性なのです。百合の花の生命力を讃えた秀句のひとつです。

俳句ポスト7月入選句(芝不器男記念館長選)

佳作

冷し酒言ふて詮なきことを言ふ

 音もなく蛇口に止まる糸とんぼ

 蝉しぐれ不器男の詩(うた)に重なりし

 庭先に額紫陽花と三輪車

 土佐の国へ鉄路は黒しひめじょおん

 夕顔のかすかに揺れて匂ひけり

 なめとこの滝がざあざあしゃべってる

 故郷に赤いカンナの道しるべ

 帰省子の四万十川へざぶと入る

 

八幡浜市

 八幡浜市

 羽曳野市

 鬼北町

 松山市

 鬼北町

 大和市

 新居浜市

 鬼北町

 

前田 一夘

 二宮 節女

 平野 明賢

 中尾  正

 和田 太郎

 松田 ツル子

 菅野 京香

 河野 初美

 宮崎 きくを   

館長の視点

 今月の入選句の中で取り上げるのは「冷し酒言ふて詮なきことを言ふ」 この句の作者は投句数の数多ある中でもきわだって熱心な投句者であり日常的に短詩型の五・七・五を勉強し続けておられる俳人である。 「世を拗ねて独り手酌の冷し酒」といかにも世を冷厳に凝視したアイロニーに富んだ句も詠まれている。世情をじっと見すえての句が多くあり、若輩者にそれとなくアドバイスをしてくださっているのであろうか。

俳句ポスト6月入選句(芝不器男記念館長選)

秀作

 青柿や不器男は永久に老い見せず

佳作

 夏草を歩いて不器男記念館

 継ぎ目なき空の蒼さに新樹光

 流木の居据ってゐる河鹿川

 あなうれし身包み脱いで梅雨晴間

 夏めくや牛乳瓶の触れる音

 父母を偲ぶ母郷の薄暑かな

 蛍のみつよつななつ人優し

 総身に不器男の郷の青あらし

 老鶯や口笛上手くなりにけり

 子供らの歌声光るほたるの道

 

千葉市

 

高松市

丸亀市

丸亀市

四万十市

鬼北町

松野町

松山市

松山市

鬼北町

松野町

 

井上 幸明

□□

□□□

涼野 海音

山地 里水

山地 里水

竹崎 蛍子

中尾  正

駒山 忠夫

岡本 典子

岡本 典子

宮崎 きくを

田中 志津代 

館長の視点

 千葉市からお越しいただいた井上さんの一句。青柿と不器男の若さとの取り合わせが絶妙である。若くして他界した永遠の俳人を尊んだ句として高く評価したい。

 鬼北町出目の中尾さんは投句歴の古い常連者であり常に達者で機微に触れる秀句が多い。感覚の鋭敏さに驚くばかり。「夏めくや・・・」の一句。牛乳瓶の音と初夏との取り合わせに研ぎ澄まされた感じ方がよく表われている。

俳句ポスト5月入選句(芝不器男記念館長選)

秀作

 春風や縄跳びあとの縄電車

 だんだんてふ言葉うれしき新茶かな

 

佳作

 観光のバスが吐きだす夏帽子

 アスファルト割って顔出す花れんげ

 万華鏡くるりと廻し夏を呼ぶ

 もてなしの蕗味噌苦し出羽の旅

 ふれ合ひし他人みな優し若葉風

 母と訪ふ不器男生家や青葉風

 笑ったりはなしたりする滝の声

 

鬼北町

鬼北町

 

 

鬼北町

 鬼北町

 八幡浜市

 八幡浜市

 松野町

 松山市

 土佐市

 

中尾  正

宮崎 きくを

 

 

大川  眺春

 中尾   正

 二宮  節女

 前田  一夘

 駒山  忠夫

 青野  由紀

 小笠原  萌 

館長の視点

  鬼北町近永の宮崎さんの一句。「だんだん」「おおきに」などの田舎ことば(方言)1と新茶との取り合わせの妙がこの句を生かしている。また、同じく鬼北町の中尾さんの一句。幼き頃の遊びの楽しさをかもし出し何のてらいも無くさらりとした一句がいかにもリアルな詠み方として評価される。大川氏の句は「吐きだす」というとらえ方に詩的情緒がにじみ出ている。


俳句ポスト4月入選句(芝不器男記念館長選)

秀作

明日までは待てぬと風の桜かな

佳作

吉野川遠くに光り花大根

初蝶に思はずこぼす童唄

花の咲く森の奥にぞ蝌蚪住める

春風の優し畑打つ農夫の背

花筏水に映せる空に在り

鍬の音の響く桜花舞ひ返る                

登校の列の乱るる花の下                  

石仏の緋のよだれ掛け山笑ふ                   

米寿とはよくも生きたり山桜                  

夏近しトロッコ列車の時刻表                  

優秀

八幡浜市

佳作

鬼北町

八幡浜市

松野町

松野町

宇和島市

宇和島市  

鬼北町  

鬼北町

西条市

松山市      

優秀

前田 卯一

□作

中尾  正

二宮 節子

上村 滋孝

上村 滋孝

高取  希

高取  希

中尾  正

宮崎 喜久郎

田坂 喜久雄

和田 新太郎

館長の視点

 八幡浜市の前田さんは熱心に投句されているお一人です。今回の一句に秘められる余情感や語らずに言わんとする真髄に触れている俳句らしい名句です。俳句など短詩型文学に詠まれる作品(詩)は言い切ってしまうと、それは説明的な文となってしまうのですが、言いたいことを詩的表現の裏に秘めて表現することによりイマジネーションが豊かになります。この一句はその意味でも味読、朗読に値する一句です。

※「用語解説」に表示されるリンクは「Weblio辞書」のページに移動します。