発掘と整備の様子

 河後森城の本格的な発掘調査は、平成3年度から始まりました。これまでの調査では、城の稜線部に展開する曲輪(くるわ)を中心に発掘を行い、多くの遺構や遺物を確認しています。

 西第十曲輪での発掘調査の様子です。曲輪上では岩盤をくり抜いた多数の円い穴の跡が見つかっています。これらは、当時の建物や門、土塀などをつくるために用いられた柱穴跡だと考えられます。本郭や古城など他の曲輪でも同様に多数の柱穴跡が見つかっています。










 本郭の西隣にある西第二曲輪南部で検出した堀切の跡です。底が平らになった箱堀の形状で、その西部では道の跡や門のような施設を検出しています。通路として使用されていた可能性があります。

 風呂ヶ谷の発掘調査では、一基の井戸を確認しています。山側は岩盤を円形に削り、谷側は石を積んでいます。斜面から流れてくる山水をせき止めてためる仕組みをもった井戸です。深さは約2mあります。

 本郭の南側で検出した道の跡です。山の斜面の岩盤を削って平らにし、上面には階段状の足がかりを設けていました。幅はおよそ1.5〜2.5mです。ここを登り、さらに左に折れると本郭に到着します。


 本郭の西側で検出した石垣の様子です。河後森城の中心となる時期は中世ですが、この石垣は近世初期の城の最終段階に設けられました。南側にも同じような石垣が残っており、本郭に限っては曲輪の周囲に石垣が設けられていたようです。
 河後森城では、平成11年度から史跡河後森城跡環境整備事業を実施しています。これまでの発掘調査成果に基づき、史跡内を5つのゾーンに分けて整備工事を行っています。
 整備が進んでいる西第十曲輪の様子です。この西第十曲輪では、城の出入り口である虎口をはじめ、中央では2棟の掘立柱建物跡を立体的・平面的に表示しています。また、曲輪の周囲でも土塁や堀切の跡を検出しており、これについても可能な範囲で立体的な手法の整備を行っています。
 左は曲輪中央の建物、右は虎口の門跡の立体表示です。柱の位置や大きさ、土壁や窓、屋根の葺き方などは当時の絵巻物等を参考に再現しました。
 曲輪周囲の土塁は、検出した遺構を参考に、土を盛り上げ植栽して表示しています。堀切は、曲輪から展望することができます。発掘で検出した形状を忠実に表現しています。